《小学生中学年向け》 【私の評価】★★★★★(96点)
山の途中の小さな家に住んでいるネコのハーニャ。
ハーニャの暮らす一年間を、季節とともに辿ります。
ハーニャは、おうちの前の庭が大好きです。
1月から物語は始まります。
庭の上には雪が積もっていますが、その地面の下では、草や虫たちが眠っています。
春になると、花が咲き、実がなり、いろどり豊かになっていきます。
夏になると、いろんな虫たちが庭を訪れます。
秋になると、柿や胡桃を食べに、リスや鳥たちがやってきます。
ハーニャの庭は、そんなに広くはありません。
ですが、耳を澄ませば、目をこらせば、様々な生き物たちがやってきて、暮らしています。
ネコのハーニャの目を通して、豊かな自然が感じられる絵本になっています。
似たような経験を、私自身もしたことがあります。
秋に山を登り、帰り道、切り株に腰を下ろして、一休みしていました。
人の気配もなく、聞こえるのは、風が枯葉を揺らしていく音だけでした。
まるで、この世界に生きているのは、私一人だけだと感じられる瞬間でした。
ですが、それは全くの間違いでした。
ふと地面に目をやると、蟻の行列が、何かの粒を一生懸命、運んでいます。
耳を澄ますと、右手の茂みから、カサッと音がしました。
しばらく見ていると、茶色いトカゲが頭を出して、日向ぼっこをするように、おひさまに向かって頭を上げました。
後方からは、ブーンと羽音を震わせながら、二匹の虫が近づいてきて、あっという間に飛び去っていきました。
山はいろんな生き物の命に溢れていました。
私だけだと思った自分が、どこか恥ずかしく思えました。
見えていなかっただけ、見ていなかっただけでした。
自然のすごさと、そこに生きている生き物のすべてに想いを馳せる大切さを、この絵本は思い出させてくれると思います。