秘密のスイーツ はやしまりこ いくえみ綾(絵)
《小学生中学年、高学年向け》 【私の評価】★★★★★(100点)
読書感想文を書くための本選びに悩んでいる方。
せっかく感想文を書くのですから、楽しく読める作品に出会うことが大切です。
そこで、ご紹介したいのが、「秘密のスイーツ」という本です。
実は、読書感想文の最初に書くことは、なぜこの本を選んだのかです。
この「秘密のスイーツ」は、題名だけで子供の興味を惹きますし、表紙の絵もとっても可愛いです。
つまり、お子さんの読むきっかけを与えてくれる要素を、ちゃんと持っている本です。
しかも、作品の内容は、単に楽しいだけではなく、ちゃんと子供に考えさせる内容になっています。
単に楽しい作品を選んでしまうと、ああ、楽しかったで終わります。
感想文も、こんな楽しいことがあったなど、単調になりがちなのです。
ですので、読みたいと興味を惹く本で、しかも考えさせる内容を含んでいる本こそ、読書感想文に適しています。
実は、なかなか、そういう本に出会えること自体が難しいという現実があります。
この「秘密のスイーツ」という本は、娘が自ら選んで持ってきた本だったのですが、私も読んで見ると、まさに読書感想文を書くために最適の本でした。
児童向けの作品とは言え、その完成度に驚きましたが、作者を見ると、あの大作家の林真理子さんだったのです。
ずっと手元においておきたくなる、素晴らしい作品です。
読書感想文
この物語は、現代に生きる理沙と、戦時中に生きる雪子が、タイムトンネルで結ばれ、お菓子を通じて交流するお話です。
理沙がタイムトンネルでお菓子を雪子に渡すと、雪子は本当においしいと感動しながら食べます。
また、親類を無くした友人にお菓子を分けて、その心を癒したいと雪子は言います。
テレビを見ながらポリポリと、空腹を満たすために漫然と食べるお菓子。
戦争で親や兄弟を亡くして、悲しみに打ちひしがれ、絶望しつつも、その甘さやおいしさに、一瞬でも時を忘れて癒されながら食べるお菓子。
同じ年齢の子供同士ですが、生きている環境で、随分と違います。
お菓子を通じて、心を通わせる二人。
一見、雪子は理沙からお菓子をもらうだけの存在のように見えます。
ですが、実はそうではなく、何も持たない雪子でもちゃんと理沙に与えることができているのです。
その点が、この作品の醍醐味であり、子ども同士の交流の素晴らしさなのだと思います。
そして、最後には驚く結末も用意されています。
感じ入るポイントがいくつもあって、どのポイントをとりあげても感想文がスラスラ書けると思いますので、読書感想文向きの豊かな作品です。
作品選びに困っている方は、是非お手にとってみていただければと思います。