小説『カサンドラのティータイム』櫻木みわ

気分転換

深い物語です。

前半は、上京してスタイリストになる夢を持つ友梨奈が、トントン拍子にいろんな人と出会って、成長していく物語で、全てが順調でした。

このまま行くのかなと思いきや、当時の有名なテレビコメンテーターの深瀬と、アクシデント的に一晩の関係を持ってしまったことから、突如として話が暗転します。

ここからが、この小説の真の見せ場になっています。

そして、この小説には、もう一人の主人公である未知が登場します。

彼女は、小説家を目指す旦那の彰吾の言いなりです。

彰吾の癇癪は、自分のせいだと思っています。

彰吾の周りの人間も、みんな彰吾の肩を持ちます。

一方で、未知の職場の同僚は、そんな彼女の状況を聞いて、それはモラハラだし、未知はDVを受けているのだと、冷静に指摘します。

題名になっている「カサンドラ」とは、ギリシャ神話に出てくるトロイの王の娘です。

カサンドラは予知能力を持っているのですが、呪いのせいで、誰も彼女の話を信じてくれません。

人を傷つけずにはいられない男。

自己愛の塊である男。

そんな男に人生を狂わされた友梨奈。

そんな夫のことで日々悩んで自分を責める未知。

そして、最終的に彼女たちの出した結論に、100%頷けないものの、それでもそれはそれで一つの尊重すべき結論だなと思わされます。

昔から、女性たちは、なぜ集まってお茶をするのか。

それは、女性たちは、カサンドラ状態に置かれることが多かったから。

女性同士が、自分の近況を話し、聞いてもらい、信じてもらい、孤独にならないようにする。

ティータイムこそ、そういう女性にとってかけがえのない、大切な時間だと思うのです。

少し読むのにエネルギーがいる物語ですが、それでもスラスラ読めてしまいます。

この小説を読んで、わかる!と共感を持つ方も、少なくないのではないでしょうか。

是非、ご一読いただければと思います。

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